雑考
東浩紀の『訂正する力』(朝日新書)を読んだ。 これは、政治や経済など、様々な分野で行き詰まりが見られる現代の日本では、すべてをチャラにするリセット願望が高まりつつあるが、それとは違う道筋として「訂正」というありかたを、東が哲学者の立場から提…
大澤真幸の『経済の起源』(岩波書店)を読んだ。 これは社会学者の大澤が、経済とは何か、贈与交換から商品交換(貨幣経済)への転換はどのようにして起こったのか、貨幣はどのようにして生まれたかなど、経済の謎を解くために、幾つもの文献にあたりながら…
三浦佑之の『浦島太郎の文学史――恋愛小説の発生』(五柳書院)を読んでの気付き。 これは、日本文学者で共立女子短期大学助教授(執筆時)の三浦(小説家の三浦しをんの父でもある)が、浦島太郎に関する様々な文献を狩猟し、浦島の物語は時代ごとにどのよう…
ウィリアム・A・ロッシの『エロチックな足――足と靴の文化誌』(筑摩書房)を読んでの気付き。 これは足病医学博士で、履物業界のコンサルタントも務めるロッシが、「足はエロチックな器官であり、靴はセクシュアルなその覆いにほかならない」ことを示すため…
みたび、金関丈夫の『考古と古代――発掘から推理する』(法政大学出版局)から。 この中の一章「十六島名称考」で、島根県の、十六島と書いて「ウップルイ」と読む地名の由来が考察されている。金関はその語源を朝鮮のほうに求めているのだが、話はほかの地名…
前回に引き続き、金関丈夫の『考古と古代――発掘から推理する』(法政大学出版局)から。 この中の一章「海南島の黎族」で、中国の少数民族、海南島に住む黎族(リー族)の、独特な文化が紹介されている。特に僕の目を引いたのは、靴に関する風習。 女の子が…
金関丈夫の『考古と古代――発掘から推理する』(法政大学出版局)を読んでの気付き。 この本は、考古学・人類学・民族学を専攻し、発掘調査も行う金関が、様々な媒体に発表した、おもに考古学に関する論考をまとめたものである。その中の一章「髑髏盃」で、イ…
キャスリン・マコーリフの『心を操る寄生生物――感情から文化・社会まで』(インターシフト)を読んでの気付き。 これはサイエンスライターのマコーリフが、寄生生物の生態をまとめた本で、寄生生物は宿主に取りつくのみならず、行動を操り、時には命を投げ出…
21世紀研究会編の『食の世界地図』(文春新書)を読んでの気付き。 21世紀研究会とは、歴史学、文化人類学、考古学、宗教学、生活文化史学の研究者9人が集まって設立された研究会であり、この本は、食材や料理の起源について、世界地図を通して書き出した、…
松田久一の『ジェネレーショノミクス――経済は世代交代で動く』(東洋経済新報社)を読んでの気付き。 これは、ジェイ・エム・アール生活総合研究所代表取締役社長兼、日本マーケティング研究所代表取締役会長(肩書長すぎ!)の松田が、世代論で経済を読み解…
佐々木正人の『からだ――認識の原点』(東京大学出版会)を読んでの気付き。 これは認知心理学者の佐々木が、「誰もがこの手でふれることのできる日常的な「からだ」が、知ること、考えることといった認識の世界と深くかかわりあっていることを明らかにする」…
鶴見済の『檻のなかのダンス』(太田出版)を読んでの気付き。 これは社会問題にもなった『完全自殺マニュアル』で知られるフリーライター(当時)の鶴見が、自身の覚醒剤所持による逮捕の体験記を中心に、ダンス、レイヴ、ドラッグ、神経症などにかんするル…
石井達朗の『異装のセクシャリティ――人は性をこえられるか』(新宿書房)を読んでの気付き。 これは慶應義塾大学教授で演劇論を専攻している石井が、男装や女装といった“異装”を、おもに演劇の場を中心として、LGBTらセクシャルマイノリティの問題なども絡め…
宮台真司の『正義から享楽へ――映画は近代の幻を暴く』(blueprint)を読んでの気付き。 これは以前の雑考「「懐かしさ」の正体」(2019・11・19)で取り上げた『絶望 断念 福音 映画』に続く、――間に『〈世界〉はそもそもデタラメである』を挟んだ――宮台の実…
國分功一郎と互盛央の『いつもそばには本があった。』(講談社選書メチエ)を読んでの気付き。 これは哲学者の國分と、言語学者の互が、これまでに読んできた書物を、それにまつわる思い出とともに往復書簡形式で書き綴った本である。この中で、話題が国家に…
宮台真司の『絶望 断念 福音 映画――「社会」から「世界」への架け橋』(メディアファクトリー)を読んでの気付き。 これは社会学者の宮台が、近代成熟期にある日本社会に適応し、生き残っていくための代替的な実存形式のモデルを、映画を中心としたサブカル…
野口悠紀雄の『仮想通貨革命――ビットコインは始まりにすぎない』(ダイヤモンド社)を読んでの気づき。 これは経済学者の野口が、仮想通貨とは何か、どのようなシステムで運営されているか、私たちの暮らしをどう変えるのか、今後はその形態をどう変容させて…
小谷真理の『おこげノススメ――カルト的男性論』(青土社)を読んでの気付き。 この本は、評論家の小谷がフェミニズムの視点で様々な映画や文学作品を読み解いた評論集である。その中の一章、『Shall We ダンス?』を代表とするダンスを主題とした作品群を取…
宇野常寛の『静かなる革命へのブループリント――この国の未来をつくる7つの対話』(河出書房新社)を読んでの気付き。 これは評論家の宇野と、「産業の、研究の、そしてエンターテインメントの現場で」「これからの日本と社会を変えうる/既に変えている」「…
皆さんは今年はお花見に行かれましたか?新緑の季節に、桜が大好きな日本人向けの話題をお届け。 今回は福岡伸一の『動的平衡2』(木楽舎)を読んでの発見。 これは生物学者の福岡が、「生物は変化し続けることによって均衡を維持している」という生命観を…
大澤真幸の『現実の向こう』(春秋社)を読んでの発見。 この本は社会学者の大澤が、2004年の春から夏にかけて、東京の神田三省堂と池袋ジュンク堂で、「現代」をテーマに行った講演を収録したものである。その内容は多岐にわたっているのだが、松本清張の『…
外山滋比古の『お山の大将』(みすず書房)を読んでの気付き。 同書はエッセイで、著者の外山は英文学を専門とする、大学教授や評論家も務める文学博士で、おもにベストセラーになった『思考の整理学』で知られている。外山は、この本に収録された「気はやさ…
毛利嘉孝の『ストリートの思想――転換期としての1990年代』(日本放送出版協会)を読んでの気付き。 この本は毛利が、「新しく生まれてきた若者たちの運動を、「ストリートの思想」という観点から捉えなおす」ために、政治と思想と文化の流れを80年代から説き…
前回に引き続き飯沢耕太郎の『写真の力〔増補新版〕』より。 本書収録の「旅の眼・旅のテクスト――「横浜写真」をめぐって」の中で、飯沢は「横浜写真」に触れている。横浜写真とは、「幕末から明治末に至る時期に、主に横浜にスタジオを構えていた写真家たち…
飯沢耕太郎『写真の力〔増補新版〕』(白水社)を読んでの気付き。 この本は、写真評論家の飯沢が写真について書いたコラムをまとめたものである。収録された一編、「Memento Mori――死者たちの肖像」と題された章で、飯沢は写真と死、および死者についての考…
新しいカテゴリー「雑考」始めます。これはどんなジャンルなのかといいますと、「雑文未満の思考の記録」です。雑文はひとつの読み物として、起承転結や序破急といった全体性、完結したまとまりをもった文章になるよう仕上げているのですが、何かしらのアイ…